4th-12/17
先日の更新から大分日が開いてしまったが、更新していきたいと思う。
講義のある教室へと到着し、おもむろにノートを開いて範囲を確認する。講義の開始までは少し時間がある。少し早かったのだろうか、まだ教室にはあまり人がいない。
「太一」
唐突に自分を呼ぶ声がして、振り返ると浩二がいた。
「なんだ浩二か」
「なんだとはなんだ、俺で悪かったな」
頭をかきながら隣の席へ座る。どうやら同じ講義らしい。
「昨日のメールだが」
「あぁ、あれな。だいたい4,5人くらいかな。」
「悪ぃ、俺はパスで」
「ま、そんなことをいうだろうと思ってたよ」
「なら聞くなや」
たわいのない会話をしたのちに、講義が開始する。
私はいたって普通にノートを取っていたが、浩二はお構いなしに爆睡している。後でノートを見せろということが予期できる分、鉄拳を食らわせて眠りから引きずり出したい気分だが、講義中のためぐっとこらえて黒板に写された画像を見る。
静まった教室内に教授の声だけが響いた。
「はーっ、帰りてぇー!」
「お前ずっと寝てたろ」
「まぁ堅いことを言うなって」
私は元来まじめに生きろと「F」に教えられて育った人間なので、こういった講義をまじめに受けない不届き物は本来関わりたくはないのだが、そもそも人づきあいが薄い私にとって、浩二は数少ない友人の一人でもある。そのため、こうやって態度が甘くなってしまうのも無理はないだろうと思ってしまう自分がいるのだ。
食堂へ向かって足を進める。
ふとその時、わきに目をそらすと、見慣れない影が一つ。
「?」
不思議に思うも、どうせ猫か何かだろうと割り切って進む。
もう少し耳が良ければ聞こえたのであろう、くちゃくちゃと肉を食らう音になぞ気を取られずに。
「おかえり」
「F」がいつものように声をかける。
「ただいま」
いつものように部屋へ向かい、パソコンを開いて今日のニュースを確認する。
その中に、信じられない記事が一つ。
「何だこれは・・・」
記事の内容はこうだ。
「――本日午後6時頃、北海道N市のD大学構内にて、30代男性と思われる死体が発見されました。死体は腹部に刺し傷と、首筋に肉をかみちぎったような跡が残されていたということです。この男性は大学関係者ではないとみられており、警察は身元は近隣に住む原西淳樹さんとみて捜査を進めています」
何だこれは。
これ、うちの大学じゃないか。
私の通っている大学は、入試こそ一般の大学と変わらないものの、教授が丁寧に講義をしてくれることと、他の大学と比べ構内が比較的落ち着いていることで有名で、殺人どころか殴り合いのけんかだって見聞きしたことはないのだ。
衝撃と困惑の中、私は一つの記憶を手繰り寄せた。
食堂に向かう途中、物陰をすばやく移動した一つの物体。
あれがこの事件の正体なのだろうか。
警察に伝えねば、とベッドから立ち上がったところで、いや待て、そんなことを言おうものならこちらが容疑者扱いされるに決まっているという結論にもいたり、善意と自己防衛の狭間を回る間に、テレビのニュースを見ることにした。これだけの凄惨な事件なら、少しくらいは特集を組んでいるだろうと思ったのである。
居間に移り、テレビを点ける。
案の定、そのニュースを取り扱っていたテレビ局はあった。しかし、私が思った以上に内容はあっさりしており、ネットニュース以上の情報は私に与えてくれなかった。
「おかしい・・・」
ふと思わず声に出たところを「F」が聞いたのだろう、
「どうしたの?」と私に聞いてきた。
「あ、いや別に」
「ん?何か隠してるよね?」
「はぁ、実はな・・・」
私は昼間に起きたことと、先ほどニュースで得た情報をそのまま「F」に伝えた。
「えー、キャンパス内で殺人かぁ。物騒な世の中だな」
「それを言いたいのはこっちだよ。こんなことになったんなら、2・3日は大学休みになりそうだし、まして俺が疑われるようなことがあればとんだ災難だよ」
「そうだよねぇ」
「F」はいたってのんきである。近所で起きた殺人のことというのに、真剣さがまるで感じられない。もとからそういう性格なのだろうが。
「だったら、明日小寺君休みだよね?調査いってきなよ」
「調査?」
「そう。前からしてた調査のように、大学周辺を歩いて何か不審なことはないか見ればいい。ネットに詳しく載ってないということは、事実を知っている人間が口止めされていることだってあるでしょ」
刑事もののドラマの影響だろうか、珍しく「F」にやる気がある。
「そんな探偵みたいなマネして捕まったらどうすんだ」
「大丈夫。君は捕まらないから。捕まったとしてもすぐに釈放されるよ、たぶん」
「?どうしてー」
「さ、夕飯を作ろうか。今日はごはんと味噌汁と豆腐だよ」
やはり「F」は何か隠しているに違いない。
この不可解な事件の裏に、消えた両親から一切知らされなかった俺の出目の秘密が隠されているとでもいのだろうか。
少し施行を巡らせてから、まさかそんなことはあるまい、どうせまたからかっているだけだろうと考えて、私は食卓の椅子に座り、豆腐が出るのを待った。
本日はここまで。
自分で書いている間に書こうと思っていたことがどんどん変わっていくので、最後にはおそらく自分が想像している結末とはかなり地会う方向になっていくと思うが、それも一興ということで読んでいただけたらなと思う。